ボクシングジム

宿にメキシコボクシングのプロ選手Iさん(日本人)がいたので、練習に付いていき、ジムを見学させてもらった。


メキシコでボクシングは人気スポーツだという。熱い血が煮えたぎるラテンの気質だろうか。よく日本人と世界戦をやることで、そのことがうかがい知れる。タツキチと何度もやったビクトル・ラバナレスなどは知っているだろうか。


ジムの中に入ると、ガラの悪そうな顔をした若いお兄さん数人が、ウインドブレーカーを着こみ、汗びっしょりになりながら、リズムよくサンドバックを叩いたり縄跳びをしていた。


よくみると、女性も数人いる。メキシコボクシングには、女性にもプロがあるらしい。


隅にあるリングでは、15歳ぐらいの少年と25歳ぐらいの女性が、スパーリングをしていた。少年が鼻血を出し、スパーリングとはいえ、真剣勝負かと思わせる迫力があった。


しばらくすると、Iさんがリングに上がった。相手は20歳ぐらいの坊主頭の怖そうな兄ちゃんだ。「あいつ、強いんですか」と心配する私に、Iさんは「去年やった時は弱かった」と余裕の顔をした。


しかし、ボコボコにやられた。試合だったら、間違いなくKOされたであろう。


終わった後、「どうっすか?」と聞くと、「くそ〜。何であんなもらわなあかんのや〜。でもあいつ、体力ないで。最後は逃げてばかりやった」と、鼻が紫色になりながらも強がってみせた。素人の私には、逃げているのではなく、かわいそうだからバックステップをし、時間稼ぎをしているようだった。


素人の私が生意気なことを言ってはいけないので、この感想はここだけの秘密にしておこう。